井上さん仕事辞めるってよ。1話
「ナナシカナさん、ちょっといい?会議室で話したい事あるのだけれど、、、」
上司からそう言われた。
「あ、はい、、分かりました。トイレ済ましてから直ぐに向かいます。」
あ、終わった。私は手を洗いながらそう思った。
とうとう私はクビになるのだろう。
きっと仕事が出来ないのが上司にもバレたのだろう。
いや、最近問題になっている仕事の件についての質疑かも知れない、、
もしかすると、左遷の話、、、、田舎の関連会社に飛ばされるのかも知れない、、
それか、上司の猪巻さんが異動になるとか、、、、
頭の中で、ネガティブな事が思い浮かぶ。
いや、もう良いや。最近(今年に入って)何一ついい事なんて起きてないし、、、
半年は無職になりたいと思っていたから、良いタイミングなのかもしれない、、
上司が待っている、会議室のドアを3回静かにノックした。
「失礼します、、!?」
あれ、チーム全員が席に座っている。
まさか、公開処刑をするのか?
いや、チーム全員という事は、やはり上司の猪巻さんが異動になる話か、、、
「遅れてすみません、、、」そっと着席する。
猪巻「えーと、まぁ少し急なのですが、諸事情により井上さんが4月いっぱいで退職する事になりました。
えー、、大変貴重な戦力が抜けますので、心苦しいですが、、一応先に皆様にご連絡いたします。
何か井上さん、皆さんに言う事、、伝えたい事は有りますか?」
井上「あ、、え、、、、、」
猪巻「まぁ、また日が近づきましたらご挨拶でいいかな?」
井上「あ、はいそうですね、、」
猪巻「えー、まだ検討中なのですが、井上さんが担当している仕事を皆さんに振る事となりますが、
協力して貰えたらと思います。また日が近づいて来ましたら、ご連絡致します。
まぁ、5月から産休の田中さんも戻ってくる予定ですので、色々と環境は変わりますが、
フォロー等よろしくお願い致します。えー、では以上でございます。」
皆が一斉に席を立った。
私はあっけらかんであった。
予想外の発表だった。
女性陣の反応からどうやらこの事について知っていたようだ。
知らなかったのは男性陣だけの様だった。
井上さんが仕事辞める。
私ではなく井上さんが、、、
辞めるべきなのは私では無いのか?
どうして辞めるのか、、
いや、羨ましい、、
井上さんは正常な判断をしただけ、、、
諸事情との事なので、辞める理由を聞きたいが聞かない方が良いのだろう。
井上さん仕事辞めるって。